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ジュニアのおはなし

徹夜明けの朝の空気は、たとえそうでなくても、徹夜した人間からすると、澄んだものに感じる。
でも、結局その1日も激務に追われ、仕事が終わってようやく自宅に着き時計を見たら、午前1時を回っていた。

極度の睡魔。
目の前には、破裂しそうなほどに大きくなったお腹をした妻がいた。

「とりあえず寝るね」
そんな言葉を残し、僕は数十時間ぶりに床に就いた。

数十分後、僕が夢のトンネルに入る直前あたり、陣痛が始まり少し辛そうな妻に起こされた。

「じゃ、行こうか」
そんな会話をしながら、身支度をし、お義母さんに挨拶をして、家を出た。
普段なら徒歩5分で着くのに、この日は休み休み歩き、15分ぐらいかかった。
(何故クルマでいかなかったのだろう???と今になっては不思議でならない)

1月の、身を刺すような、肌を切るような寒さ。
いくら温暖化とはいえ、冬の深夜の寒さはどうやっても寒い。

助産院につくと、冷たい水で顔を洗って無理やり目を覚ましたような、小柄で可愛い先生が出てきた。そして、6畳ぐらいの和室にはすでに布団が敷いてあり、お願いして僕の布団も用意してもらった。
僕はすぐに横になり、奥さんに並んだ。
妻の陣痛に耐える辛さが薄れてしまうほど、僕の瞼も相当重かったのだ。

「まだすぐ産まれなさそうだから、ご主人寝てなさいよ」
お言葉に甘えさせてもらった。

それからのことは、実際のところ、あまり覚えていない。
騒々しい気配に目を覚まし、起き上がるとそこには、先生のほかに、助手の所産師さんがいた。

「お父さん始まるよ~」
先生のやわらかい言葉。

妻の相当な辛さに「死んでしまうのでは?」と本気に思ったぐらい、妻はものすごい力で僕の手を握っている。
僕自身、興奮していて、かつて見たこともない出来事が目の前で進行していることが、なんだか夢のように思えた。

2004年1月29日、8:20AM。

我が家に二人目のセガレが生まれた瞬間だ。

人間の本能。
いや、動物。

大きなハサミを渡され、自分の手でへその緒を切った。
そして、胎盤を見せてもらった。

今までに触れたことのない場面に自分がいた。
人生観が変わった!なんてことはないけど、「感動」した!

ビデオテープには収めていないけど、僕の脳みそのなかにあるハードディスクには確実に記録されてある。
ロックをして決して消えないようにしておかないと。

僕の手によって母から切り離された4歳の我が家の次男は、小麦粉アレルギーをほぼクリアし、幼稚園に通い普通の食生活をしている。
(本当にヨカッタ)

次男坊らしく、ワガママで言うことは聞かない。
言うことを聞かないから父親に怒られてすぐに泣く(笑)。
そんな毎日の繰り返しだ。

「可愛いけど憎たらしい」
「憎たらしいけど可愛い」
どっちも同じだが、そんな表現がピッタリな、我が家の次男坊である。
by kaztosshin | 2008-02-03 23:55